2002/04/12(金) あたしの内分泌的背景。

1、名称 ドゥーテストLH 体外診断用薬品

酒が抜けるのに丸一日かかる。せっかくの休みを棒にふった。昨日の昼から一歩も部屋の外に出てないことに気づく。図書館に借りっぱなしだった本を返しに行く。あと、銀行と、薬局に寄ろう。

2、開発の経緯及び特徴 ドゥーテストLHは尿中のhLHピークを検出する事により排卵を予測するものです。
特徴1、尿を検査スティックにかけるだけのワンステップで操作が簡単。
   2、結果がラインの濃さだけでわかり、判定が容易。

風が強い。雲が多い。寒いほどではないが毛糸のカーディガンを羽織って行く。時折雨粒がポツリと落ちる。貸しスペースの前で劇団の公演のチラシを眺めていたら、以前いっしょのバイト先で働いていた人と偶然であう。しばらく立ち話をする。整体の勉強をしている彼女は昨年胃癌で母親をなくした。四十代の若さだったという。

3、成分・分量 検査スティック1本中
抗ヒト黄体形成ホルモン抗体(ウサギ)液……1.5~5μl
金コロイド標識抗ヒト黄体形成ホルモン・
モノクローナル抗体(マウス)液……25~52μl

酔いが覚めたらものすごく空腹を感じた。ラーメン屋をのぞくがどこも準備中だ。しかたなく駅前のチェーン店に入る。客は他にふたり。ハーフサイズの麺にチャーシューと角煮と味付卵ののったこってりした九州ラーメン。生のニンニクを絞って入れる。なんだか豪華すぎて味がよくわからない。高菜を入れる。ふりかけみたいなものも入れる。酢もかけてみる。お腹がいっぱいで苦しい。ヨーグルトを買って帰る。

4、適応 尿中のヒト黄体形成ホルモン(hLH)の検出

靴屋の前を通り本屋の前を通り魚屋、八百屋を抜け、高架下を歩いて帰る。コインランドリー、駐輪場、月極駐車場、マンション、不動産屋、コンビニエンスストアー。昨日電話で話した友人の住む土地に思いをはせる。「コピー機がないんですから」と彼は言った。わたしが、どこかインターネットを見れる場所はないかと聞いた時。インターネットカフェとか、まんが喫茶とか。そんなものはないのだと言う。コンビニエンスストアすら。だったらなおさら、買えよな。PC。

5、測定原理 本キットは、金コロイドクロマト免疫測定法により尿中のヒト黄体形成ホルモン(hLH)を検出するものである。検査スティックの採尿部に吸収された尿中に存在するhLHは毛細管現象により、検査スティック下部にある金コロイド標識抗hLH・モノクローナル抗体と結合し、複合体を形成する。この複合体は、さらに毛細管現象により移動し、検査スティック中央判定窓に固定化された抗hLH抗体に補足され、赤紫色の線となって判定窓に現れる。尿中にhLHが感度以下しか存在しない場合は、判定窓に線は現れない。

初めてセックスをした相手のことを思い出す。顔はよく覚えていない。黒かった。インドだかイラクだかイランから出稼ぎにきていたアジア人だ。わたしのことを「天使」と呼んだ。ナンパされて一緒に入った喫茶店の紙ナプキンにふたつのハートを書いて矢でつらぬいた。わたしは自分の名前を教えた。男はくり返しわたしの名を口ずさんで覚えていた。男は何もない自分のアパートにわたしを招き入れ、電気を消して、薄い布団の上でわたしを抱いた。押入れの上の段にテレビが置いてあった。男のものはほとんどわたしの中にはいらなかった。痛かったはずだが涙はでなかった。寒い、と言うと電気ストーブをつけてくれた。暗い部屋に電気ストーブの赤がぼうと浮かぶ。男はわたしを背中から抱いて暖めてくれた。やさしい人だったんだと思う。それから二度と会うことはなかったけど。

6、操作方 1.アルミ包装を破って中の検査スティックを取り出しキャップをはずす。2.検査スティックの採尿部に尿を3秒以上かけ、キャップをかぶせる。又は採尿容器に尿を採った場合は、検査スティックの採尿部を約10秒間尿につけ、キャップをかぶせる。3.15分以降に判定窓内を観察し、次のように判定する。

別れた男と再びセックスする可能性について考えてみる。それは最初に出会ったときよりも、さらに高い枝に実る禁断の木の実だ。手を伸ばしても簡単には届かないだろう。今のわたしに木を登ってまでその実を得たいという欲望はない。せいぜいイソップの狐のように、あんなもの、まずくて酸っぱいに決まっている、と強がって唾をのむのがいいところ。でももしその実が熟して、枝から落ちて目の前に転がっていたら? わたしは食べてしまうだろう。そしてその味に酔うだろう。たとえ毒と知っていても、わたしは食べるにちがいない。木には近寄らないことだ。少なくとも当分の間は。


7、判定法 陽性:判定窓内に赤紫色の線がみとめられたとき。
        陰性:判定窓内に赤紫色の線がみとめられないとき。

猫みたいに産めたらいいのに。

8、判定に係る注意 尿量サインが着色しない場合は、再検査を行う事。

十四で生理がきた。二十八で結婚した。それから八年。一度も受精したことがないというのはわたしのコンプレックスだ。病院に行く必要があるのだろうか。生理はあくまで順調なのだが。過去に一度だけ婦人科に行った事がある。排尿の度に痛みがあったからだ。検査台というのだろうか、奇妙な形の椅子に座らされた。屈辱を感じる。痔を患ってベッドに寝たとき以上だ。できればなるべくあんな格好はしたくないのだが。その時は尿道炎と診断され、抗生物質を処方された。不潔な性行為が原因と言われる。ちっ、あいつめ。文句を言いたかったがその時会えない状況になっていた。薬を飲んで一週間ほどで治った。

9、性能 操作法に従い感度、特異性、再現性の各試験を行った場合、下記の企画に適合する。①感度試験 hLH濃度25IU/リットル以上で陽性と判定される。②特異性試験 陰性尿、および陰性尿にhLHを50IU/リットル添加した試料を調整し、操作したとき、両者の線の色の濃淡に明らかな差が認められる。③再現性試験 感度試験と同様の操作を、3回同時に行うとき、いずれも陽性と判断される。④妨害物質 ・本試薬による尿中hLHの検出は、下記の物質及び濃度で感度の低下を示さない。

物質名            濃度
ヒトベモグロビン       3.6mg/ml
グルコース          100mg/ml
ヒトアルブミン        10mg/ml
アセトアミノフェン      2mg/ml
フェニルプロノールアミン  2mg/ml

・本試薬による尿中hLHの検出はpH4~9の範囲では、阻害を受けない。

あたしの卵、あと何個?

10、相関性 他社品Aとは、次のような相関が認められた。(n=50)

      ドゥーテストLH
         陽性  陰性
他社品A 陽性 18   2
       陰性  2  28


何を信じよう。神様。医学。あたしの生物としての勘。そんなものまだ残っているのだろうか、野生の勘。バランス感覚なら持ってる。時々危ういけど。それでも何とかここまでやってきた。好きなように生きてきたと言っていいだろう。いろんなものに夢中になり、そして忘れた。捨て去った。後に置いてきた。新しく夢中になれるものを探した。それは結構面白かった。わたしは凝り性だから、取り組んだことに関しては常にそれなりの成果を上げることができる。器用貧乏、って言葉には苦笑を禁じえない。自分が正にそれだと思うからだ。あたしはそこそこなんでもできる。だから困っちゃうんだけどさ。

11、使用上又は取扱い上の注意
1.一般的注意 (1)検査スティックの採尿部には手を触れない事。(2)使用期限の過ぎた検査スティックを使用しない事。(3)本試薬を避妊などの他の目的のために使用しない事。
2.被験者 (1)妊娠、分娩後、流産後、胞状奇胎、絨毛癌等の絨毛性疾患、人工妊娠中絶後、あるいは不妊治療のための薬剤投与、内分泌障害、閉経期などでは陽性を示す事があるので他の臨床所見にも注意する事。(2)通常、排卵期には25IU/リットル以上のhLH濃度となり、本検査スティックを使用する時、陽性反応を示すが、女性の内分泌的背景、例えば不規則な月経周期、短期LHサージ(12時間以内)などの要因により、まれに陰性を示す事がある。
3.被検尿 紙コップに採尿後は、できるだけすみやかに検査する事。
4.廃棄方法 本品を廃棄する際には、プラスチックゴミとして廃棄する事。

今日も日が沈む。それだけで泣いたっていいじゃないか、という気はする。なんてまわりくどくて面倒臭いんだ。ドラマが必要なのか。ストーリーがなきゃいけないのか。夕日がきれいだから。それだけで涙を流す原始人にわたしはなりたい。あいにく今日は曇り空だった。重い。重たい。気分まで重く沈んでいく。

12、貯法 室温。直射日光を避けて保存する。

そうだな、散歩の距離が短すぎたかもしれない。隣町まで行けばよかった。考えすぎだ。手を振って軽やかに歩けば気分も少しは軽くなったろうに。血のめぐりが悪いんだ、きっと。PCにばかり向かいすぎだ。言葉に飢えてる。もっと言葉が欲しい。

13、有効期間 24ヶ月。外箱に表示の使用期限内に使用する事。

本を開く気がしないのはどういう現象だろう。新しい歌を覚える気がしないのはまずい傾向かな。最近じゃBGMさえ邪魔になるんだ。PCのファンの回る音、キイボードを叩く音。家人の立てる物音。外を車が走る音。遠くで電車の音。

14、包装単位 5回分・7回分

こうしている間にも時は経って夜は更ける。なんてまわりくどくて面倒臭いんだ。それでもって愛すべき日々の営みよ。どこまで行ってもきっとこんな毎日だ。風が吹く。雨が降る。日が昇る。日が沈む。眠る。起きる。食べる。排泄。病む。癒える。死ぬ。生れる。

15、主要文献 W.H.O.Task Force:Am.J.Obstet.Gynecol,138(4),383(1980)平野睦男 他:臨床婦人科産科,41(12),832(1987)

また明日。

月子