2002/04/13(土) 私感:天王寺の男

『おす。すごい偶然や。今日のオレの日記、月子姉さんの日記とちょっとカブってる(笑)そんなワケやから今日は寝るわ。おやすみ。』02/04/12 23:11

ん? 日記がカブるってどういう意味?

早速『天王寺の男』を読みに行って見た。なるほど。めずらしく弱音をはいてるコマジュン氏。いや、弱音とも違うな。あくまで冷静なのはさすがやね。

しかも翌日には復活してるし。(強気キャラで通したな! コマちゃん)

病院嫌い、個人主義、何か急に泣きたくなった、音が気になる、文字や言葉に頼ろうとしてみる。共通点はこんなとこかな。あとは全体の憂鬱なトーン。

東京の曇り空と大阪の曇り空、似たような景色。近いようで遠い。

最初に『天王寺の男』を読みに行ったのはいつだっけ。いずみちんとかおぎーのさんのゲストブックで名前を目にしてたのがきっかけだ。目次を見に行ってみようかな、ええっと……。そだ、これだ。「3月4日売春婦のいない世界/地獄やでホンマ」これがいちばん最初。のぞき行ったのはその前の「韓国マッサージのオバハンをマッサージした話」から。のそいて見たものの読み下せなかった。句読点なしの頃で、どこで息継ぎしたらいいのかわかんないんだもん。改行は今でもなし。やたら改行が多くて「詩(ポエム)」みたいになってるのが女性の日記の特徴のひとつだとすると、おぎーの氏、あとはいずみちんの日記も男性的であるといえよう。あのぎっちりと文字のつまった感じがね、慣れるとそれが魅力。結局内容面白くなかったら、いくらレイアウト読みやすくしたところで誰も読まないからね。

あとはゲストブックのやりとりが実に活発で興味をひいた。日記の内容とがっちりリンクしていてああ、この人は現実と積極的に「渡りあおう」としている人なのだと見て取った。お膳立て済みのナンパな「出会い」なんかじゃなく、自分の嗅覚と足を使ってリスクを負って渡りあう覚悟だ。おぎーの氏のゲストブックで「日記」や「メール」での出会いは有効か? という話題をふった時にもコマジュン氏は「オレはネットで知り合って実際に会った時の『しまった!』っていう感じも結構好きですよ(笑)」つう、余裕の発言。あらかじめ自分の居場所(天王寺)を明らかにしているのもわたしには新鮮だった。

「飽きたらやめる。」

なんば花月からすぐの個室お好み焼屋で氏はのたまった。なんて名前だったかな。ひらがな三文字の店。古くからあるんだって。前日の日記に腰痛レポートが載っていたのでもしかすると会えないのではと危惧したが不調をおして登場して下すった。ネット上で知り合った人物と実際に会うのはわたしにとって初体験だ。

今日、ひとつ思い出したことがある。ラジオを通しての出会いだ。

かれこれ二十年近くも前の話になるが、所ジョージの猛烈なファンだったわたしはTBSの「進め!おもしろバホバホ隊」というラジオ番組にはがきを投稿して読まれるのが楽しみだった。常連と言われる人たちがおり、その中のひとりがはがきにわたしのペンネームを書き、そこにつづけて「愛してます。」と書いた。所さんがネタと一緒にそれを読み上げたのでわたしの妄想は広がった。その人は本名で投書しており「東京都○○区」というところまでわかっている。電話帳を調べてみるとその区内に同じ名字の人は五人くらいしかいない。わりと珍しい名字だったのだ。電話帳に載っているのは多分父親の名前だ。名前の一文字が同じと思われるお宅に電話してみる。

ビンゴ! 相手も驚いていた。お互い所さんのファンであることはわかっているので公開番組に誘う。おお、積極的なオレ。ふたりは結ばれたのか……。

これがあたしの最も強烈な「しまった!」体験なのでござるよ~。

もう、待ち合せのその場で、後ろをくるりと向いて帰りたくなるほどの、すっごい相手が現れた。「ガーン!」て書き文字が頭の上に出たね、岩みたいなヤツ。黒目なくなって額にタテ線入った。いちおう公開番組はいっしょに見た。自分から誘った手前。悪夢みたいだった。相手には悪いけどさ。

教訓。会ってみるまではわからない。やたらと相手のイメージをふくらませすぎるのはよくないみたい。とはいえ、日記は情報量が多いですから勝手にふくらんじゃいますわな。それにわたしだってあの頃よりは経験積んでるはずだし。

3月4日から『天王寺の男』をさかのぼって読み、その「ええかげん」な魅力に打たれたわたしは自分の日記に感想を書いた。3月6日のことだ。相手の日記にコメントをつける方法がわたしは好きじゃないので感想を書いたことを氏のゲストブックに報告にいった。ファースト・コンタクト。

3月23日の日記「マイルスデイビスと東京露出クラブ」でコマジュン氏はカップル喫茶潜入レポートを書くためのパートナーを募集する。すなおさんのゲストブックにも書いたけど、カップル喫茶をよく知らないわたしは「同伴喫茶」のようなものと思い、名乗りをあげるべく氏にメモを送る。セカンド・コンタクト。

4月の頭に大阪に行くのでその際会えないだろうか、と思ったのだ。「カップル喫茶はともかく」というのを合言葉のように何度かメモのやりとりをし待ち合わせをする。メモの言葉と日記の言葉は当然だけど重力が違う(ゲストブックもオープンなものだからそこもまた違う比重を持つ)。そこで更に誤差を測定してわたしがこれから会おうとしている相手の想像図に修正を加える。はたして十数年前の「しまった」体験の教訓は生きているのだろうか。

で、あたしのコマジュン氏の印象はどうだったかと言うとほぼイメージ通りの平1、って感じ。ん? 意味不明? まあいいじゃん。細かい容貌はあえて書きませんことよ、ふふふ。せっかく皆様の頭の中につちかわれたイメージが損なわれるといけませんもの。日記の通りのお方です。まあわたしの目に、『天王寺の男』の筆者であるとこの「コマジュン氏」、というフィルターがかかってますから、なおさらそう見えるんでしょうけど。別の出会い方をしたら、きっと全然別の人に見えるはずだ。(たとえばニセモノだったりしたら見抜けるだろうか? どれほどつっこんだ会話をするかにかかっているだろう。後は自分の直感が頼りだ)

まりこ嬢の4月10日の日記「天王寺の男」を今日読んだ。まりこ嬢から見たら彼は10歳年上の大人の男。わたしにとってはちょい年下のそれでも場数を(何のや?)踏んだ男。「思ってた通り楽しい人」うん、そやね。わたしもまりこ嬢の意見に1票。

お好み焼屋でも、カップル喫茶どうしましょう? という話は出た。

そこでわたしは「カップル喫茶」という場所が自分で思っていたほどカジュアルな場所ではないことを知るのだが、腰痛の氏は「うーん」と考えわたしの顔をごらんになる。カチカチカチ、と変態指数測定器のカウンターが氏の頭の中で回っているような気がしてわたしは少し緊張する。わたしの中の欲望の量を測ってらっしゃるのだろうか。だとしたら出掛けにセックスしてきてしかも生理中なのでわたしの体内に出した男の精液までお見通しなのだろうか? (嘘)結局カップル喫茶潜入は、他にもエントリーしている女性がいるというので見送ることになった。残念なようなホッとしたような複雑な心境。すなおさんの4月12日の日記「哀しみがいっぱい相互鑑賞プレイルーム」を読んでやっぱりわたしには役不足だったなと思った。そうよね、変態部長。

食後にコーヒーを飲んだ。

ここにしましょかと氏が適当に選んだのは、「喫茶・桟橋」。

桟橋て……。素敵じゃん。

お好み焼屋と喫茶店。トータル4時間。主に日記の話と変態の話。数日後、氏はライコスクラブに「千日前変態倶楽部」を設立する。

「桟橋」の、2階の窓際のソファにもたれて、道行く人を見下ろす。沈黙が、もつのがいい関係なんて話の後で何本目かの煙草に火をつけて、

「ミナミは今日も平和やね……」

とつぶやく、天王寺の男。

と、

以上、「私感(視姦じゃなくってよ):天王寺の男」の巻きでした~。ほな。月子