2002/05/29(水) 益荒男との3日間。つづき。<e-mode>

※注意:e-modeとはエロティック・モードのことです。この日記は露骨な性的表現を含みますのでそのような内容の文章を読みたくない方はご遠慮ください。

 

昨日はどこまで書いたんだっけ?

読み返せばいいことじゃない? でもそれすらかったるい。早く書いて書いて夢中になってたくさん書いてちったあすっきりしたいのに。

昨日もそうだった。午後からみっちり日記書くつもりだった。益荒男宅に滞在し三日間のことを余さず思い出しながら、生クリームたっぷり使ったケーキみたいに胸焼けするほどねっちり濃厚に書くつもりだった。男達が部屋を出て行ってから。宅急便の荷物ほどくのも後回しにして。

そしたら別れた男から電話があった。仕事ばっくれて自分の部屋にいるという。でもって電話じゃ眠くてしょうがないからこっちに来いという。

別れた男の部屋。

最後に行ったのは3月だっただろうか。とにかく足の踏み場もなく散らかっていた。タバコの灰やこぼした飲み物や小銭やCDや本や雑誌やネズミの糞やらで最悪なことになっていた。もちろん寝る場所もない。男が自分の部屋に戻りたくないというのでわたしたちはホテルを利用しセックスしていた。ホテル代は男がもった。わたしはあの部屋でよかったのに。四畳半一間、風呂無し共同便所のあの部屋。

片付けた、とは聞いていた。ずいぶん物を捨てたと。恋人が(今日入籍すると言っていた。嫁か。花嫁だな。)今住んでいる部屋を引き払っていったんこっちに来るからと。

わたしが何度「部屋片付けたら?」と言った所でなああああんにも変わらなかったあの部屋が片付いているのだ。花嫁の力は偉大やね。

「部屋に来い? あんたに触るの我慢するのつらいんだよ?」
「いいよ、触っても。」
「何それ、独身最後の一発を決めようっていうんじゃないでしょうね。今までの我慢はどうなるのよ。でも部屋は見てみたいな。」
「来れば?」
「やだ、もう彼女一緒に住んでるんでしょ。」
「どうかなー」

聞くとまだ彼女は自分の部屋を引き払ってないのだそうだ。こっちに帰って来るかなー? などと言っている。だってあんたたち明日入籍するんでしょ? 仕事終わって九時か、それより早いか、と男が言う。電話していたのは4時過ぎだった。

「じゃあ行く。部屋見てみたい。行ってもいいのね。」

いいよー、と男が言うので要さんからのでっかい荷物をかごに入れ自転車で男の部屋に向かう。ひとりで見るのがもったいないからいっしょに開けて見ようと思ったのだ。この仕事には彼も参加している。自転車で三十分。途中寄り道をした。

結局。

セックスなんかしなかった。たいした話もしなかった。だって寝てるんだもん男。ここんとこ寝てないらしいのだけど、話したいから来いとか言ってなかったか? 電話で。本気でわたしたちの離婚を食い止めたいのならその態度はないだろうと腹が立った。いや、のこのこ部屋まで来てしまった自分に腹を立てていたのやも知れぬ。

靴を脱ぐスペースがちゃんとある! わ、床が見えてる広ーい! ベッドがない!(捨てたって言ってた)お香の焚いた跡がある! お茶飲めるセットがある! うわ! 窓辺にグリーンがある!! グリーンよ、グリーン観葉植物よ!!! いやーん。

何のことはない、新婚さんの部屋に来てしまったのである。も・の・す・ごーーーく居心地が悪い。もちろん些細な変化であり、どれもとても小さく質素なものだが、離婚云々でもめてるあたちにはちょっと刺激が強すぎたのさ。銭湯へ行くためのお風呂セットもふたつ置いてあったし。

花嫁パワー恐るべし。

食生活に無頓着でガスさえ部屋に引いてなかった男。缶入りの飲み物を買ってくるか、水でも飲むしかなかった。カセットコンロやヤカンやきゅうすが置いてあるだけでも画期的だ。新生活おめでとうこんちくしょうって感じである。

「失礼しました。」

帰り際に泣いてしまったので顔を洗ってから男の部屋を後にする。夕方の風が気持ちいいのだが、帰り際、アパートの入口ですれ違った若い女性が花嫁だったのかどうか気になってしかたがない。六時だった。

でもいいや。男の部屋に行くついでに区役所寄って離婚届はもらって来たのさ。閉館の五時ぎりぎりだった。話がいつまでたっても現実味をおびてこないので。あわててするもんでもないけど、このままうやむやにされてしまうのでは、わたしがたまらないから。

ふう。

彼らが出た後のあの部屋に住んでみたいなんて妄想広げてたけど、無理だってわかった。思い出ありすぎ。駅周辺を歩くだけでも切ないのにそりゃ無理ってもんだ。わたしたちが性交を繰り返したベッドはもうあの部屋にはない。それを肉眼で確認してきただけでもういい気が済んだ。多分あそこはわたしがいちばんたくさんセックスした場所だ。笑ったり、泣いたり、怒ったりしながら。腕枕されたり、眠る男の顔をボールペンでスケッチしたり、天井裏をねずみが走る音を聞いたり、夏に茹る中で男の汗が雨のように降ってきたり、冬隙間風にこごえて薄い布団にふたりでくるまったり(せまい! 重い!)、電気ヒーターの上で温めた缶のコーヒー飲んだり(空き缶が吸殻だらけで)、経血でシーツ汚したり、フェラチオしてるところデジカメで撮られたり(データはハードディスクごと全部吹っ飛んだって言うけど)、手首をベルトで縛られて鴨居のところに釣られたり、した。かつて。

そして隣の浄水場の音が常に聞こえてくるあの部屋。懐かしい。

夜は入籍している同居人(すなわち夫)が仕事で家を空けているので書きかけの日記を書いた後、益荒男と長電話。彼の部屋が近かったら確実に会いに行っているであろう。十時間の距離はわたしたちのためになっているのか。

「相談できる女の友達がいないというのはこういう場合難点よね。」
「僕もそう思います。」

女は信じられない。かといって男も信じられない、でも男には意地があるから。しかし女よりも弱いのが自分、と言う益荒男の話を聞きながら、独り鍋でトムヤンクン雑炊を煮るわたし。酒でも飲もうかと思ったが近所の自販機の販売時間が終了していて面倒なのでやめた。日本酒ならもらいものの一升瓶があるけどヤケ酒に飲むにはもったいないようないいお酒なのだ。花婿も寝てないかもしれないけどわたしだっておとといから二時間くらいしか寝ていない。

入籍している同居人が帰ってきたので長電話終了。面倒臭い話し合いのつづき。共有財産も子供もないわたしたちの離婚はその気になりさえすりゃとっても簡単なことなのだ。面倒なのは気持ちの問題だけ。

今やりたいことは、今日の休みを一日使って、昨日書きそびれた益荒男との三日間を細かいところまで思い出しながら書くこと。それだけ。前向きなことは何もやりたくない。外はいい天気らしいけど。(つづく)
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