2002/07/08(月) これはわたしの毛細血管。酸素が通わないと恋も壊死をおこします。

この一文字一文字がね。

昨晩は、天の川は無理と知りつつも夜空を見上げに外へ出てみた。七夕の夜が晴れるのはめずらしいから。街灯のまばらなところをえらんで星を探す。住宅街の屋根の切れ目にみっつほど数えることが出来た。星座を組むのは無理のようだ。といってもわたしに見分けられるのはオリオン座と北斗七星ぐらいのもの。

生きるのに、とにかく精一杯で、恋愛どころではない相手に惚れてしまうと、まあ、嫌われてはないにせよ、時折、片想いに近い時間を過ごさなくてはならない羽目に陥る。こちらの恋愛パワーの出力をセーブしないと、なんとなく、見返りが少ないような、報われないような、損をした気分になったり、愚痴っぽくなったり、感情が不安定になったり、してしまってよろしくない。熱い心を理性の衣で包みます。素知らぬふりをしてみます。

背後からいきなり、淋しさに襲われたりします。がばあ、と。羽交い絞めです。ふいを突かれ、息ができなくなり、身動きが取れなくなり、日常の雑事が手につかなくなったりします。もらった手紙を読み返す、などどいう取って置きの緊急手段を講じたりしてみます。酸素ボンベです。口に当て、すーはーすーはーしてみます。少し落ち着きを取り戻します。言葉に頼ります。

それでも恋をするのはいいものです。

自分の心がいろいろに揺れ動きますから、変化がある。退屈しない。退屈は恋の敵ですから。思い出が増えます。なにしろ物事に対する思い入れの量が違います。線香花火1本、が、胸に染みます。「ケンタッキーフライドチキン」で「きゅん」とできたりします。何でもないアイテムに特別の意味が生まれる。とてもお徳です。

そりゃあたしは惚れっぽい。でも、だれかれ構わず恋に落ちるわけではない。わくわくしそうな予感が必要だ。面白くなりそう。この人のことをもっと知りたい。もっと一緒に時間を過ごしたい。入口はそんなものだ。欲情するのはもう少し先。言葉を交しているうちに相手に触れたくてたまらなくなる。それが発端。引っかかりがないと、火はつかない。いくらマッチを擦ってもね。

興味が芽生えてそのざらざらに、しゅっとマッチの頭を当てて、目出度く炎がともります。でも消えちゃうの。たいていはすぐに。運がよければ燃え移る。同時に燃え上がることはそれこそめったにないのね。どちらかが、火種を絶やさずに持って入れば、引火する可能性はでてくるけど。導火線の、短い人も長い人もいる。もちろんひとりで燃え尽きてしまう場合もある。

夏は陽炎を見ますよ。かげろう。炎を幻視してしまいます。熱いから。お互いに火がついたような気になります。秋が来ると終わります。ひとなつの恋。それはそれで夏の風物誌。打ち上げ花火のようでよろしいかと。どかーん、と。でもあたしのお好みは、冬に心を温めてくれるようなほのぼのした恋なのね。なあんて、そんな思い通りにはいかないのであった。恋にだったら踊らされてもいい。でも用心には越したことがない。

火力を一定に保つのは難しいね。夏はホント、消えない程度に、奥のほうでちらちらと
、それで乗り切るのがいいみたい。恋愛どころではない相手の、せめてお役立つことが、わたしの恋が生きのびる道。火の用心。

 

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仕事中にスケッチ。
2002.7.8