2002/03/15(金) 雪彦からメール。この子、大人だ。少なくとも今のわたしより。

今ちょっと、放っておかれてる。

わたしが、雪彦に。メールの返事が遅い。

電話だ。雪彦かな?

わんわんでした。もー、なんちゅうタイミングでかけてくるんだ、
まったく。仕事が終わってもう帰るそうです。今日もたくさん書き
たいけどな。わんわんのお相手もしないと。あんまり放っておくと
不機嫌になるし。飼い犬(←失礼なたとえ)だって、毎日いいこい
いこしてあげないと毛並みが悪くなると言うよ。愛情って、本当、
日々のものだね。

放っておかれている時は、こちらも放っておく。う、つら~い。

雪彦のことばっかり考えすぎだ。軌道修正。

メモくれたももさん、サンキュー! 前にお気に入り登録とかをし
てくれた事あったよね、認証とかをしなくてごめんね。わたし、日
記のためにメンバーズ登録してるので、プロファイルの「お友達作
ろう」というノリはようわからんのです。来るものは拒まずで行き
たいのはやまやまですが、愉快な思いばかりじゃないからね。自由
に日記書く妨げになリそうな事は極力避けようというわけ。

ムーしゃんともセックスの後、食事しながら何かそんな話したっけ。
ネットの虚構性と現実、みたいな。この日記の事はムーしゃんには
内緒だから、ここでの経験をそのまま話せないのはもどかしいけど、
「本当じゃなくていいんだ」って事をムーしゃん言ってた。ネット
上で真実にどれほどの価値があるのかと。

わたしは、ついこの間までネットの世界なんて知らずに生きてきた
し、それで不便も感じてなかった。雪彦にはせっせと手紙書いて切
手はって出してたし、携帯電話も欲しいと思わなかった。

新しいコミュニケーション方法。でもそれを使う人間はいっしょ。

ネット上では簡単に嘘がつける。年齢も性別もいつわれる。新たな
現実が生れる。そうすることによって実体はいよいよ希薄になる。
それこそを望む人もいる。ムーしゃんの友達で「もう俺はネット内
で生きる」と宣言した人もいるそうだ。

わたしはそこまでネットにはまれない。やだ、怖いもん。自分が自
分でなくなっちゃうなんて。

放っておかなきゃいけないつうのに、メールチェックしちまった。
やんなっちゃう。もちろんメールは来てませんでした。

どんどん手ごたえがなくなっていくんだよ。生きることの。簡単便
利な世の中さ、何だって手に入る。切符買うのも、お金おろすのも
タッチセンサー指1本。蛇口を捻らなくても手をかざせば水が出て
くる。自動ドア。エスカレーター。高層ビル。アスファルト

でもわたしは、古本屋をはしごして欲しい本を探す楽しみを、知っ
てる。面倒、不便、時間がかかる。見つからないことだってある。

ガラリ、と入り口を開ける。古い本の匂い。手触り。ページをめく
って値段を見る。書棚に戻す。買わずに出る。もしくは会計をする。

男と汗だくになってセックスするのは、小さい時夢中になって泥遊
びをしたのに似ている。水を汲んできて、泥んこを作る。指と指の
間からにゅるりと粘土が出てくるのはとてもエロティックな感覚だ。

神様は土から人間を作ったって聖書に書いてある。

アダムって「塵(ちり)の人」って意味なんだって。

人をだますのって、楽しいのかな。わたしにはわからない。わたし
の日記を読んだ方が、面白いと思って下さるのは、誤解や思い込み
はあるにせよ、わたしが自分で感じた事に忠実だからだろう。

この間わんわんが借りてきたビデオを見た。『A.I.』。映画自体
はなんだろう、なんかなあ、って感じだったけど、主人公の子供ア
ンドロイドが、「ぼくは世界でただ1人の特別でユニークな存在な
んだ」と言うところは心に残った。誰でも特別扱いされたいもん。

恋は特別扱いすることだ。愛されてると感じる時「わたしは特別な
んだ」と思える。でも本当はみんなが特別なんだ。その点はみんな
一緒なんだ。世界は「不平等」という点で、「平等」。

ああ、駄目だというのにまたメールチェックを……。もおう。

バイトは行った。散歩も行った。仕事? そんなもん今手につか
ん!

さすがにもう泣いてません。峠は越したか。次いつ会いに行こうか
気もそぞろ。雪彦、「あんまり求愛されすぎてもこわくなってしま
うのでのほほんといきましょう」だって。うわーん、こってりの手
紙送っちゃったよー。着くのは今日か明日か。メールと手紙じゃ時
差があるからなあ。タイミングとるのが難しいよ。

わんわんの事を少し書こう。

わたしも寝る時は裸派だが、わんわんもそうだ。朝起きると、こっ
ちの布団へ来て、しばらくくっついてから仕事に出かける。生肌は、
どんな布より気持ちがいい。わたしの知る誰よりも、寝起きのいい
わんわん。朝から歌を歌っている事もある。寝起きのいい人は寝つ
きも良い。枕に頭をつけたら5秒で寝る男。

思い出した。男の尻に指を入れたのはムーしゃんが初体験じゃなか
った。わんわんと熱々だった頃にわんわんにしてあげた事があった。
興奮して、「もっとー!」と叫んでたわんわん。「箸つこんでー
!」だって。危ないからしなかったけど。可愛かったよ。

わたしの事を椅子に縛りつけて出かけてしまった事もあった。ワイ
ンを口移しで飲ませっこするのがふたりの間ではやってて、その状
態でわたしにワインを飲ませようと買出しに行ってしまったのだ。
放置プレイか。わたしは本気で怖くなって、帰ってきたわんわんに
泣いてはずしてもらった。火事になったらどうするのお、と泣いた。
そうめったに火事になるもんじゃないが、縛られてると妄想がふく
らんで恐怖に支配される。プレイなんて楽しいもんじゃなかった。
それでもその後、ワインの口移しでなだめてもらったけど。

忘れてる事、他にもいっぱいあるみたい。

今、雪彦からメール。

この子、大人だ。少なくとも今のわたしより。冷静。保身。自愛。

泣いちゃって書けない。PC電源切ります。また今度。

月子(泣)←マジ泣き