2002/07/09(火) ソルダム、水蜜桃、にわか雨、桃源郷。

桃の季節です。

さっきスーパーマーケットで見切り品の桃が出ているのを確認しました。さっそく買いに行きましょう。わたしがくだもののなかで一番好きなのはたぶん桃。

男の部屋にいりびたっていたとき、近所の八百屋で桃を買って戻ったことがある。「どうやって食うの?」と皮ごとかじりつこうとする男を笑って眺めたものだ。

桃には産毛が生えている。あまり冷たくないほうがいい。冷蔵庫からは出しておく。流水にあて手の平で、撫ぜるように洗ってふきんで拭く。やわらかい桃の皮膚に爪をたてる。皮はするするむけなくては、ならない。ちょっとくらい打った痣があってもいい。充分に熟していなくては。はだかにした桃にかぶりつく。丸ごと。ナイフで切りわけたりしてはいけない。汁が、垂れるのがいい。お行儀悪く、くちびるで、吸いつくようにして齧る。手がべたべたになる。それがいい。あと洗えばいいんだもの。ついでにくちのまわりも。

こんな食べ方が好きなので、皿やタオルは必需品。ひとりだったら台所の流しに立ったままいただいてしまうこともままある。じゅるじゅると、かぶと虫にでもなった気分だ。

数人でわける時には、テレビの裏技番組でやっていた、桃を、ルービックキューブ(懐かしい)のように回して種からはずす方法を使うこともある。クシ型で六等分になる。食べやすい。でも興奮しない。そう、桃を丸ごと一個食べるとき、わたしは軽く興奮している。性的快楽に近いものを感じる。小麦粉をこねる時もそうだけれど、微量のエクスタシーが、指先や、くちびるから流れ込んでくる。魚をおろす時もそうだ。包丁を立てて頭を切り落とす時。

だから男の部屋に戻る時、わたしは桃を買ったのだ。

昨日の夕方買い物に出ると、お天気雨にあった。ざーっとくるかと思ったが、ぱらぱら、乾いたアスファルトに吸いこまれて消えてしまった。エアコンの室外機の水滴が、ビルから降って来たのかと、勘違いする程度の雨粒であった。

夕立が恋しい。一気に空が暗くなって雷が鳴る。湿った涼しい風が吹いてくる。あっというまに大粒の水滴に襲われ雨宿りするひまもなくずぶ濡れになりたい。だって、夕立だから、濡れながら歩いていたって、かまわないのだ。服を着たまま天然のシャワーを浴びる。はだかだったらどんなに気持ちがいいだろう。

夏ですね。

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火曜日、店はヒマなのか 笑。
クレヨンで色つけてみました。2002.7.9