2002/07/07(日) 歌が生まれるのって人生に恋してる時かもしれないな。

家人が、毎朝、歌を歌ってくれる。

既成の歌ではなく、その場その場で口から出まかせの、鼻歌と呼ぶにはあまりにもご機嫌な調子っぱずれの変拍子。わたしはそれで起こされる。

寝つきがよく寝起きもよい。どちらもあまりよろしくないわたしは羨ましい、というより呆れる程である。まあ、でも、家人はご機嫌なのがよろしいよ。

子供作る作らない問題も離婚するしない問題も曖昧のまま、まだふたりして布団をならべ裸で寝ている。アダムとイブというよりはタマラとカマラ、狼に育てられた子供たちのように。枕の位置は相変わらず互い違いだ。家人が風呂に入らなかった夜は足が臭い。

むっつりしている朝もあり、煙草をふかして無言で出かけていく。ゴミを出してくれるところは偉い。これでわたしは心おきなく朝寝ができる。何曜日は燃えるゴミ、何曜日は不燃物、などもちゃんと把握している。掃除はとことんやらないけど。

寝る前は、酔いどれて恐ろしく荒れて手がつけられなくても一晩眠ると「けろり」としてオリジナル鼻歌。子供のような復元力。でも仕事終わって帰ってくるとまた別人なんだよな。眉間にシワ寄せて帰って来る。そして必ず飲む。主にビール。

最近、不機嫌にこう聞かれた。

「なんで化粧するわけ?」

へ? けしょー? してないよ、なんで?

世間一般の36歳の成人女性にはあるまじきわたくしはほとんど化粧をしない。何のことを言っているのだろうと思いきや、足の爪に施したペディキュアが気に入らないらしい。ああ、落とすの忘れてたんだよ、ごめんよ。素足に下駄を履くときに、パールの入ったい淡い藤色のペディキュアが見えるのが自分では気に入ってたのだけど。

思い起こせばわたしがまるで化粧をしなくなったのは、家人の影響だ。アクセサリーも嫌がる。猛烈に嫌がる。家人に近寄られたくなかったら、手や首にじゃらじゃらを掛ければいいのだ。それが結界になる(悪霊か?)。彼の母や祖母が持っていた数珠が子供の時から嫌いだったのだそうだ。家人にとってアクセサリーはすべて数珠と同類なのである。わたしが二十歳の時にあけたピアスの穴も、ふさがってしまった。

ファウンデーションをきちんとしないとあまり化粧する意味はないが、最近は眉を少しだけ整えるようにしている。軽くシャドーを入れることもある。家人に気づかれない程度だ。トワレを使うこともある。これもほんの少量。この辺は、若いのとつきあってる影響。ま、めったに会えないんですけどね。気分気分。

パーマネントもいやがるのでござるよ。「おばさんおばさん」とうるさいのでもう、かけない。くせっ毛だからまあいいや。去年ひどく短くしてしまったのが、後ろで結わける程度には伸びてきた。よかった夏に間に合って。首筋はラジエーターだから、夏は髪を上げておかないと。

なんだかんだと家人仕様になっている自分に気づく。それもそうだよね。8年も枕を並べて眠っていれば。9月で知り合ってから丸9年になるのだ。

禁断の家人ネタでありましたがまあ、これくらいならいいでしょ。

 

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ドイツのテーブルワインとガラパゴスゾウガメ
2002.7.7 日曜日の午前中


月子