2002/01/28(月) 好きな男の部屋の匂いをかぐと胸がせつなくなる。

とくに男3。

この人ちっとも男臭くないの。

汗とか体臭とまた別の匂いなんだよね、部屋って。服とか本とか食
料品とか電気製品とかほこりとか、いろんなものの混ざりあった匂
い。

男3は去年の夏に引越しをして、部屋を移ったのだが、もう今の部
屋も前の部屋と同じ匂いになっている。わたしにとっては懐かしく
て胸が痛くなるような匂いだ。

それを男3に言うと、

「それは単に部屋が臭いのでは?」

と心配していたが、違うんだよー。汗臭いのや男臭いんじゃなくて、
強いて言えば子供みたいなちょっと甘ったるい匂い。言葉じゃうま
く言えないけど。

肉体関係を持つと日常的な社会生活よりも至近距離でお互いの体臭
をかぐことになる。

よっぽど病的でない限り好きな相手の匂いは気にならない。

というより大好きになる。

男3の部屋に2回目に遊びに行った時、男の部屋を去りがたくて、
脱ぎ捨ててあったTシャツを1枚こっそりバッグに入れてきてしま
った。

それにはわたしが大好きな男の部屋の匂いが染込んでいた。

こっそり出してくんくんと犬みたいにかいでみる。

うっとり……。

でもわたしはわんわんじゃないからちょっと変態かもと心配になっ
た。女の下着を好む人もいるわよね。でも誰でもいいわけじゃない
から変態とは違うと思う。男の匂いが恋しいだけだ。

布製の手提げ袋に入れてあったTシャツの匂いが日がたつにつれて
薄くなっていくのが切なかった。あいたいあいたい、くんくんくん。

1ヵ月後、男の部屋を訪れた時「間違って持って帰っちゃって」と
Tシャツを返した。わたしも似たような黒いTシャツを着てたし、
やっぱり「匂いをかぎたくてこっそり持っていったよ」とはいいづ
かったので。本人気がついてなかったみたいだけど。まあTシャツ
1枚だもんね。

かつて男2の部屋に入りびたりだった時、性交で濡れた下着を男の
持っていた洗濯物入れに放り込んで帰ったことがある。

その頃、男2のつきあってた相手に自分の存在を主張したかったの
かも知れない。動物のマーキングといっしょだ。

男2は自分の洗濯物といっしょに洗っておいてくれた。

「月子さんの匂いがしたよ」

洗う前に匂いをくんくんしたのだと。んもーこのドスケベ変態! 
と思いつつ嬉しいわたくし。匂いを受け入れてもらえると自分の存
在を受け入れてもらえた気がする。「洗うのもったいなかった」っ
て言ってたけど洗わずに保管しちゃったらマジで変態だからそれは
ちょっといやかも知れないなあ。

男1とはお互いの匂いをかぎながらもう8年も暮らしている。部屋
はふたりの匂いが混ざりあった匂い。男のほうがどうしても匂いは
強いかな。これはこれでホッとするんだ。自分の匂いも混ざってい
るわけだし。

「月子さんは無臭ですね」

いっしょにせまいユニットバスの浴槽につかりながら男3は言うけ
ど、そんなことないと思うんだけどなあ。

じゃあまた。

なんだか毎日淡々と過ぎていくわ。

月子