2002/01/19(土) ドクター・ストップならぬボディー・ストップ

熱が下がってだいぶ楽になった。

でもまだお腹の情勢が不安定なので固形物が食べられない。
液体だけ。頭が痛い。早くよくなってコーヒー飲みたい。

男3とは共同である事業のようなことをしているのである。
それにかこつけてほぼ月1回のペースで会いに行ってた。

終電ぎりぎりで夜中に着いて駅で待合わせてそのまま飲みに行って
タクシーで部屋に戻ってセックスして眠って起きたらもう帰る。
夏にそんな離れ技をしたこともあったけど、やっぱり切ないよね。

秋頃メールで、今度会ったら「映画にでもいこうか」と誘うと、

「僕はふたりでぼうっとしてたい」

と返事が来た。

ああ、もうほんと、それだけでよい。ふたりで会うことそれがいち
ばんの贅沢だ。

11月にデートをした。

仕事も一段落していて、さしあたってやることはなく、その前会っ
てから2ヵ月たっていたので、会いに行くのが純粋な目的だった。

まあお互いの労をねぎらって祝杯をあげましょう、という名目。

夕方部屋についてしばらくおしゃべりした。何かの拍子で手がふれ
あったから、そのまま手を握ると、自分の両うでを大きく広げて
(さあこの胸に飛び込んでおいで)というジェスチャーをする男3。

照れるぜ。

最初はいつもちょっと照れる、

会う前は想像の中で押し倒してるんだけどね。もう部屋へ入るなり
くちびる奪ってやろうとか、妄想たくましくしてるわけさ。

でもいざ再会すると、

「つきましたー」

「お疲れ様です」

「お久しぶりー」

「まあゆっくりして下さい」

めちゃ普通。まあこれでいいんだと思います。

で、照れながら男3の腕の中に飛び込んでやっとキスを交わします。
まだちょっと早いけど布団敷いてセックス。

それから祝杯を上げに行きました。近所の居酒屋で鍋を注文。生ビ
ールに日本酒。うどんも頼んで雑炊にしました。出足が遅かったの
であっというまにお愛想の時間。「もっと飲みたい」と男が言うの
コンビニで酒をつまみを買って部屋で飲みなおしました。

翌日わたしのリクエストで水族館へ行きました。
とてもロマンティックでした。はずかしいのであまり詳しく書きま
せん。「正調・おデート」といった趣でした。帰りは夜でその辺一
帯がライトアップされてて

「これは手でもつなぐしかないでしょう」

と男に言われて手をつながせていただきました。
泳ぐマグロを見ていたら寿司が食べたくなったので、その晩は寿司
を食べに行きました。

3日目。帰る日です。
男に誘われて地下鉄で15分くらいの所にある緑地帯へ行きました。
すでにライトアップで手をつないだわたしたちですのでもうこわい
ものはありません。スーパーへ材料を買出しに行きサンドイッチを
作ってかばんに入れました。

「袋、別にしたほうがくずれないよ」

「サンドイッチはかばんに入れるのがいいんです。ラピュタみたい
でしょ」

天空の城ラピュタ」にそんなシーンがあったそうな。じゃ、おま
いさんはパズーか。わしゃシータか。おれたちゃジブリか。(違う
って)まあ、気分はそんな感じ。11月だけど天気はよく、外で過
ごせるぎりぎりの季節でした。

男3が自転車で走っていて偶然見つけたと言う緑地帯。

広かった。適当にほったらかしで小山や雑木林がいい感じだ。大き
な広場を抜けると巨大な門があってその向こうはハスの葉の茂った
大きな池で中国みたい。年配の男性が集って碁や将棋を打っている
のも何だか大陸っぽい。今思い出してもちょっと夢の中の風景みた
いな気がする。

「ね、いいでしょう」

池の淵にあるベンチにならんで腰かけてサンドイッチの包みを開く。
やっと見つけた売店で(何しろ広いので)買ったビールと一緒にい
ただきます。ちょっと寒い。けど気持ちいい。

「そんな贅沢食いをして。僕だってちゃんと食べてるのに」

わたしがサンドイッチの耳を残すとそう言った。

「なんですかそのお婆ちゃんみたいなすわり方」

ベンチにくずした正座ですわってるとそう言った。だって足が寒か
ったから。じっと座ってて寒くなったので、食べ終わるとまた緑地
帯の中を散歩した。手をつないでいてくれた。つないだ手をポケッ
トの中に入れていた。小山を登り、雑木林の中の小道を歩いた。こ
ころの中ではキスがしたいな、と思ってたけど、同時にこれでもう
十分、とも思ってた。

帰る前に古本屋に寄った。

帰りの乗り物の中で読む本を買ってくれると言う。有線放送で「く
るり」の曲が掛かってた。「あっ」と思った。前に男3がくれた、
自分の好きな曲を集めたMDに入っていた曲だ。男3の方を見ると、

「ちょっとうれしい」

と言った。「もし今日ひとりでこれ聞いてたら確実に泣いてます
よ」だってさ。

地下鉄の中ではうたたねをして男3の肩に寄りかかっていた。疲れ
た。けど気持ちよかった。

部屋にたどり着くともう一度セックスした。

「寝かさんぞ~」

だって。「帰りの乗り物の中で寝ろ~」と言ってる。なんか嬉しい。
すごく嬉しい。ああ、もう帰るのか淋しいなあ。でもそれは考えな
いようにしてもう一度セックスだ。


……なんつーような事を、熱で寝込みながらつらつらとずっと思い
出していた次第。

まだ病み上がりなんでねー、ソフトな話題で、うしろ向きに、自愛
精神です。無理しません。からだの声にしたがって生きます。

病院嫌いなんでお医者にはかからなかったけど、今回の逢瀬が延期
になったのはドクター・ストップならぬボディー・ストップといっ
たところでしょうか。

今夜あたりまた電話してみようっと。

じゃあまた。

月子